スキット 傍に
彼女はあまりに「まとも」な感覚の持ち主だった。
狂信者らの集団において、そのまともさこそが逆に異質だ。
だからルークには疑問を抱いた。
なぜ「まとも」に見えるはヴァンら狂信者――あるいは盲信者に与しているのか、と。
「預言が詠まれなくなったことは嬉しいけどさ。あたしは星の記憶だとか、人類の解放だとかに興味がない。操られていることを知らないなら、操られていないことにもなる。――まあ」
ヴァンの前じゃ言わないけどね、と夜色の瞳の娘は言う。
「だったらどうして兄の味方をしているの! 兄は、兄は世界を滅ぼそうとしているのよ? ――貴女ごと!」
鋭い語気のティアが問う。それにもは揺らがない。
もう決めた目だ、とルークは思った。
ヴァンやルークのように、己の信ずるところと道を定めた目だ。
「傍にいるって、決めたから」
「……シンクの?」
アニスの呟きに。
さざなみ一つ立たない戦士の仮面が剥がれた娘が、小さく微笑んだような気がした。
スキット 傍に
2018.02.10 初出
2022.04.22 加筆修正