いつか正夢になればいい、と彼は祈らない。
――一糸纏わぬ姿。未踏の白雪のごとき柔肌。ずっとそれに触れたいと思っていた。自分のものにしたいと考えていた。誰にも渡さない。誰にも渡せない。
――シンクはを選び、そしてまたもシンクを選んだ。
組み敷かれたが恥じらうように、困ったように、愁眉を寄せている。
わずかな抵抗とばかり、裸の双丘のふくらみの前で腕を交差させているが、そんなものはないに等しい。
「……ボクとするのは、嫌?」
この期に及んで、だが。
無理強いをしたいわけではない。無体を働きたいわけでもない。
ただ、もっと、もっとと彼女を求める強い欲求に身を任せてしまいたい衝動に、抗うことが、難しい。
でも、いまは拒絶されるなら、待とう。は根本的なところでシンクを受け入れる。愚直に悩み、向きあい、そうしてシンクを引き上げた。手を引いてくれた。やさしいちからでつなぎ止め続けていてくれた。
薄紅色の、やわらかそうな唇が、何かを言おうとする。ああ食らいついてしまいたい。どんな味がするのだろう。
「その、なんていうか、お手柔らかに、ね?」
重ね合わせたそれは、あまい、としか喩えようがなかった。
*
――という夢を見たシンクが目覚めて真っ先に確認したことは濡れた下着の交換だった。
いつか正夢になればいい、と彼は祈らない。
2018.04.20 初出
2022.04.22 加筆修正